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アート•文芸:新刊紹介 根岸規雄&石原洋子著「ふたりのごはん」(KADOKAWA)

元ホテルオークラ料理長、根岸規雄さんと妻で料理研究家の石原洋子さんの手軽でヘルシーな本物の味を紹介

 

東京のYMCA国際ホテル専門学校を卒業後、開業1年前のホテルオークラに入社し、5年後にスイス、パリで5年間の料理修業を終えてホテルオークラに復職した根岸規雄さん。2001年から2009年までは料理長として采配を振った根岸さんは半世紀にわたってホテルオークラで料理に携わってきました。現役をリタイアした根岸さんが思うことは「日々の食事が健康にいかに大切であるか、思い知らされます。家庭料理こそ健康の源です」と記しています。

 

 

▲「ふたりのごはん」表紙        ▲著者の根岸規雄さんと石原洋子さん夫妻

 

一方、石原洋子さんは自由学園に学び、家庭料理、中国料理、フランス料理など各方面の第一人者に学び、料理家のアシスタントを経て自宅で料理教室を開いて40年以上になります。テレビや雑誌などで活躍中です。

 

そんなふたりが紹介する料理、となるとさぞや高級で手の込んだものでは? と思いがちですが、「料理人と料理研究家の料理というより、毎日のなんでもないふだんの我が家のごはんを中心にご紹介したい」と、石原さんが記していますように身近かでしかも健康的な料理ばかりです。

 

どんな料理が紹介されているのか、いくつか紹介しましょう。

/朝昼晩のごはん

 朝•••野菜スープ、フレンチトースト、プレーンオムレツ、その他

 昼•••小松菜ぶっかけうどん、かき揚げざるうどん

 夜•••牛肉の薄切りさっと焼き 薬味添え+オクラときゅうりとわかめの酢のもの、ぶりの照り焼き+大根とえのきのみそ汁 

 

 

▲ラタトゥイユの作り方手順    ▲上記の通りに作ればホテルオークラ並みのフレンチトーストができあがる

 

2/ふたりで作る我が家の四季の味

 春•••たけのことちくわのきんぴら、たけのことハムのクリーム煮、帆立のパリパリチーズ焼き、いわしの梅山椒煮、その他

 夏•••なすの南蛮酢、ラタトゥイユ、きゅうりの中華風辛み漬け、その他

 秋•••鮭のムニエル きゅうりのタルタルソース添え、生鮭のしょうゆ麹焼き、マロンシャンテリー、その他

 冬•••大根と豚肉の中華風の煮もの、白菜と牛肉のくたくた煮、切り干し大根の煮もの、ねぎベーゼ、その他

 

/特別な日のごはん

 鶏のから揚げ、はるさめサラダ、中華おこわ

 

以上のような構成になっています。

これら一見、普通のメニューに長年の経験からちょっとしたコツがいたるところに散りばめられているところが本書の特徴です。

 

たとえば、「フレンチトーストは一晩、卵•牛乳•砂糖の液に浸け込ませ手からじっくり焼く」は、シンプルな料理の中にホテルオークラの味を忍ばせてくれます。

 

○    ○    ○

 

ちなみに我が家では、毎週土曜日に1週間の献立(昼食と夕食)を表に書いて冷蔵庫に張っています。現役中の料理番は100%私でしたが、リタイアした昨年からは少しは夫に料理を覚えてもらうために献立表を作ったのです。

 

こうすることで、メインの魚、肉類のバランスを整え、残りの材料を無駄なく使える効果もあります。ただし、夫の料理番はなかなか身につきませんが、それでも少しは興味を持ち始めたようです。

 

(2018320日、ノンちゃん)

アート•文芸:新刊紹介 山岸邦夫著「The Return of a Shadow」(英文長編小説)

強制収容所を生き抜いた長田栄造の姿から日本人移民への影響に光を当てる

 

 

かつて在トロント日本国総領事館に勤務していた山岸邦夫さん(B C州バンクーバーアイランド在住)が、英文の長編小説「The Return of a Shadow」を著わし、このほど出版されました。出版社は英国の Austin Macauley Publishers です。

 

 

この小説は、カナダの日系人強制収容所とそれが一人の日本人移民に与えた影響を今日的視点から描いたものです。

主人公の長田栄造(おさだ・えいぞう)は、太平洋戦争の前、経済的理由から妻と3人の年若い息子を日本に残して単身カナダに渡りますが、戦争ぼっ発と共に日系人強制収容所に収容されます。その後、43年間をカナダで過ごし、70歳になった時、家族と再会すべく日本に帰国することを決めます。カナダに渡って以来、家族に送金を続けてきた栄造ですが、妻との音信は23年前に途絶えています。その理由を知ることもないまま、彼は日本を訪れ、家族と会いますが、失意のもとに再びカナダに戻ってきます。

 

本書のタイトルにある「影」とは誰のこと? なぜ影なのか? この小説は強制収容所を生き抜いた長田栄造の姿に、そして強制収容が彼に及ぼした影響について、著者の新たな視点から光を当てます。

 

本書は、第一部:カナダ、第二部:日本、第三部:強制収容所、となっており、全部で25章の構成です。380ページ。

 

プロローグでは、著者が物語の主人公、長田栄造を知るにいたった経緯と、栄造が埋葬されたバンクーバー島カンバーランドの日系人墓地に彼の墓を詣でた模様が手短に語られます。

 

第一部では、主人公のカナダにおける悪夢のような孤独な生活が描かれます。日本の真珠湾攻撃後、カナダの日系人は強制収容所に収容され、急ごしらえの掘っ建て小屋での生活は悲惨を極めました。著者は、史実を追いかけ、数人の強制収容所生存者とのインタビューを経て、強制収容が一日本人に与えた影響を、そして人間の業を鋭く突いています。

 

第二部では、日本に帰り、家族との再会を果たした栄造が描かれます。日本で彼を待っていたのは何だったのでしょうか。彼の不在の間に家族に何が起こったのでしょうか。果たして彼を迎えた日本は想像していた通りだったのでしょうか。

 

第三部では、栄造は家族の理解を求めて、今は50歳に近い年齢の息子達にカナダでの強制収容所のことをこと細かに語って聞かせます。家族は彼に理解を示し彼を受け入れたのでしょうか。受け入れなかったとしたら、何故でしょうか。栄造は傷心の中に再びカナダに戻ります。そして81歳の生涯を閉じます。

友人とその息子が遺灰をカンバーランドの日系人墓地に納め、碑を建立して帰途についたその時、カナダ連邦政府が戦時下の日系人強制収容を非と認めて公式謝罪をしたというニュースが車のラジオから流れます。

 

エピローグでは、カナダ連邦政府が行った日系人に対する公式謝罪と補償、人種差別をなくすための基金設立の内容が紹介されます。

 

著者の山岸さんは「この小説の中で長田栄造は実在した人物として描かれていますが、あくまでも虚構上の人物です。多くの日系人一世のイメージを凝縮し、象徴した人物像が長田栄造と言えるでしょう。ただし、栄造が本書の中で語るカナダ連邦政府の対日系人政策および強制収容所の生活内容はすべて史実に基づいたものです」と話しています。

 

【山岸邦夫略歴】

福島県福島市生まれ。法政大学で経済学を修めた後、カナダに移住し、在トロント日本国総領事館でリサーチの仕事に従事。カナダの証券会社に転職後、Bay Street、東京の金融街、そしてニューヨークのウォール街で証券業務に携わる。今は退職してB C州バンクーバー島に住む。

 

The Return of a Shadow

by Kunio Yamagishi

Austin Macauley Publishers

 

【本書の購入方法】

下記のいずれかで購入できます 

amazon.ca

amazon.uk

amazon.com

近所の書店にもお問い合わせください。

 

 

2018年3月5日 まとめ:色本信夫)

 

アート•文芸:寒波は読書三昧の絶好チャンス

ジャンル、作家、何でもありの読書に幸せを感じます

 

今年の冬は昨年12月から例年になく寒い日が続いています。NHKのニュースでも「北米•東部に寒波到来」と流していました。ずっと昔、30年以上前はこれくらいの寒さは珍しくありませんでしたが、ここ最近暖冬だったせいか、この寒さは身に応えますね。

 

秋から暮れに体調を崩していたことや寒さもあって、あまり外に出かけられない分、読書三昧と決め込んでいます。

 

高校生の時、3年間同じクラスで九州から東京の大学に入学した時も2年間同じ下宿先で同居した文学少女だったKさんの影響で私も当時は随分、本を読みました。Kさんは読書好きから当時、国立国会図書館に併設されていた国立図書館司書養成短期大学に進みました。私は私立大学の仏文科に進学。当然、フランス文学を中心に読んでいました。

 

田舎から突然、都会に出て、サルトルやボーボワールの実存主義だの本当はよくわからないままにかぶれて読み漁っていました。映画ではヌーベルヴァーグ全盛期で、「ヒロシマ、モナムール」(邦題:24時間の情事)を撮ったアラン•レネ監督作品の大ファンでした。中でも「去年マリエンバートで」は場所と時期を変えて4〜5回観ています。この映画も結局のところ、よくわからないままでした。でも何か魅かれる作品でした。

 

学生の頃、日本の作家では倉橋由美子が好きでした。何となく「去年マリエンバートで」に通じるものがあって、絵で言えばシャガール的で幻想的なところが好きでした。ある時、前出の友人Kから「倉橋由美子って、ちょっと浮き世離れしてツンとすました美形作家と思っているでしょう? 実際は赤ん坊を背中に背負って洗濯物を干しているような普通のおばさんみたいよ」と聞かされ、ショックを受けたのを今でよく覚えています。しかし、彼女の作品と現実のギャップがまた魅力になりました。残念ながら彼女の作品集は家やオフィスの移転の時に断捨離で公共施設に寄付したりして処分してしまいました。

 

私に読書の面白さを教えてくれ、散々小説の感想を討論した友人Kは20数年前トロントの我が家に来てくれ、昔話に花を咲かせました。しかし、その半年後、ガンで亡くなりました。まだ50代になる前でした。我が家に来た時は全く元気で病気を感じさせませんでしたが、考えてみるとその時すでにガンは進行していたと思われます。あまりのあっけなさに言葉も出ませんでした。Kは国立国会図書館司書養成短大を卒業後、東京工業大学図書館に司書として勤務し、独身のまま本と過ごした人生を終えました。

2016年に仕事をリタイヤして、一番の楽しみは本を読み漁ることでした。ジャンルや作家など何でもいいから、とにかく「読みたい」の一心でした。昨年12月から1月にかけて読んだ本は以下の通りです。ブルーマークは特に好きだった本です。(これらの本はジャパン•ファンデーションの図書館で借りたものです)

 

*カズオ•イシグロ「日の名残り」

*カズオ•イシグロ「忘れられた巨人」

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*辻仁成「海峡の光」

*金原ひとみ「蛇にピアス」

*綿矢りさ「蹴りたい背中」

*磯崎憲一郎「終の住処」

*川上未映子「乳と卵」

*中村文則「土の中の子供」

*阿部和重「グランド•フィナーレ」

*柴崎友香り「春の庭」

*津村記久子「ポストライムの舟」

*伊藤たかみ「八月の路上に捨てる」

*青山七恵「ひとり日和」

*島田雅彦「ニッチを探して」(430ページ)

*小野正嗣「九年前の祈り」

*川上弘美「蛇を踏む」

*津村裕子「黙市」

*三浦しをん「まほろ駅前多田便利軒」

*楊逸(ヤン•イー)「ワンちゃん」

 

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《2018年1月〜》

*小川洋子「博士の愛した数式」

*阿刀田高「白い魔術師」

*町田康「告白」(850ページ、読書途中で断念)

*米原万里「打ちのめされるようなすごい本」(524ページ)

 

これらの前に今年、又吉直樹「火花」、村田沙耶香「コンビニ人間」、西村賢太「苦役列車」、黒田夏子「abさんご」などを読みました。話題の「火花」は理屈っぽさが鼻について好みではありませんでしたが、「コンビニ人間」は着眼点が身近なのと著者の自虐さにユーモアを感じて楽しく読めました。

 

私もいつかはあの世へ行くわけですが、その時に友人Kと読書談義ができるよう、頑張って少しでも多くの本を読んでおきたいと思っています。

 

*本に関しておすすめ本やご意見がありましたら下記のメールアドレスにお寄せください。

 

noriko.i@rogers.com

 

(2018年1月3日、ノンちゃん)

 

 

 

 

新刊紹介:細川道久著「ニューファンドランド」

英国最古の海外植民地だった辺境の地が「カナダになる」までを追う

 

 

 

カナダ研究家で、これまでカナダに関する著書多数を上梓している鹿児島大学教授の細川道久氏が、11月に「ニューファンドランド いちばん古くていちばん新しいカナダ」と題する本を彩流社から出版しました。

 

著者はまえがきで、「ときにアメリカ合衆国の51番目の州と皮肉られることもあるカナダは『巨象の隣にいるネズミ』にたとえられるように、圧倒的に存在感は小さい。とはいえ、隣国アメリカ合衆国の影響を受けながらもユニークな存在であり続けるカナダは、私のような『カナダ・オタク』にはたまらない魅力がある」と述べています。

 

その上で、イギリスの最も古い海外植民地で、第二次世界大戦後、カナダの最も新しい州として誕生したカナダ最東端の地ニューファンドランドにスポットを当てたのが本書です。

 

1867年、ケベック州、オンタリオ州、ノヴァスコシア州、ニューブランズウィック州の四つの州がカナダ自治領(ドミニオン・オブ・カナダ)という連邦体を結成。これがカナダの建国となっています。このあと、1870年マニトバ、1871年ブリティッシュ・コロンビア、1873年プリンスエドワード島、1905年アルバータ、サスカチュワンが加わりました。

 

1949年にニューファンドランド島およびケベック州と接するラブラドール地方がニューファンドランド州としてカナダに仲間入りしました。このカナダ10番目の州は、2001年、ニューファンドランド・アンド・ラブラドール州(Newfoundland and Labrador)と改称され、現在に至っています(本書では「ニューファンドランド州」と表記)。

 

では、イギリス最古の海外植民地ニューファンドランドが、どのような経緯でカナダに編入したのであろうか。それをニューファンドランドのみならず北大西洋世界の動きに注目して描いてみるのが本書のねらいとなっています。

 

本書は、「第I部 カナダ編入前史」と「第II部 カナダ編入」の二部で構成されています。第I部では、大航海時代からイギリスの行政管理統治下に置かれた1930年代までをカバー、第II部は、第二次世界大戦ぼっ発からカナダへの編入までを扱っています。

 

大航海時代にニューファンドランド沖の大西洋に豊富なタラの漁場「グランドバンクス」が発見され、ヨーロッパの国々からの漁民で賑わいました。ヨーロッパの食糧事情の改善を求めて、「海のビーフ」と呼ばれるタラの需要が高まったのです。しかしタラ漁場は冬の期間は操業ができないことから、季節的な要素が強くなりました。さらにヨーロッパでの英仏抗争が北米にも影響が広まるなど、ニューファンドランドは人々の定住化が進まない状態でした。

 

本書では、ニューファンドランドがカナダ連邦との統合案が、漁業協定をめぐる紛争などでうまく行かず、挫折したいきさつが分かりやすく述べられています。第二次世界大戦が始まり、カナダはセントローレンスの河川と湾に接するニューファンドランドの防衛がカナダの安全に欠かせないとみられるようになりました。北大西洋の防衛の要(かなめ)としてその重要性を強く認識したのです。

 

こうしてイギリスとカナダがニューファンドランドをカナダ編入に導いたとされています。このカナダ編入には「陰謀説」があると唱える人が現れて、大きな話題を呼んだようですが、陰謀説のてんまつが詳細に記述してあるのが、興味深いです。

 

とにもかくにも1949年3月31日、ニューファンドランド州が成立しました。住民代表者会議や住民投票での対立、その後も続いた反対派による抵抗と、じつにさまざまな出来事がからみ合い、難産のすえにニューファンドランド州は誕生したのです。

 

著者の細川氏は、本書の随所にカナダやニューファンドランドに関するクイズを読者に投げかけていて、読書中、ちょっとした頭の体操を楽しませてくれます。また、各章の末尾に載っている「コラム」の閑話休題的な話題がおもしろい。例えば、「ニューファンドランド犬とラブラドール犬」などは、愛犬家ならずとも目を引かれるコーナーとなるに違いありません。

 

「ニューファンドランド いちばん古くていちばん新しいカナダ」

細川道久•著

彩流社

定価:2400円

 

(12月24日 まとめ:色本信夫)

 

アート・文芸:新刊紹介「カナダの歴史を知るための50章」細川道久編著

先住民、仏・英植民地、国家の自立、戦後の発展、移民、日加関係


 

カナダの歴史および英帝国コモンウェルスの歴史研究家として知られる鹿児島大学教授、細川道久氏が、カナダ連邦結成150年にちなんで、この8月10日、編著書「カナダの歴史を知るための50章」を明石書店から出版しました。

 

細川氏は、今までに何度もカナダに足を運び、現場取材をするとともに歴史資料などを収集。「カナダの自立と北大西洋世界─英米関係と民族問題」(2014年、刀水書房)、「『白人』支配のカナダ史─移民・先住民・優生学」(2012年、彩流社)、「はじめて出会うカナダ」(共著、2009年、有斐閣)、「多文化主義社会の福祉国家─カナダの実験」(共著、2008年、ミネルヴァ書房)、「カナダの歴史がわかる25話」(2007年、明石書店)、このほか多くの本を著しています。また、訳書も多数あります。

 

このたびの新刊「カナダの歴史を知るための50章」は、10年前に上梓した「カナダの歴史がわかる25話」より、さらに深く踏み込んだとらえ方を披露しています。それぞれのテーマを取り上げるにあたり、細川氏自身と27名の中堅若手研修者の執筆をまとめ、編纂してあるので、さらに読者の興味をそそる内容となっています。

 

本書では、世界の歴史のうねりの中で変貌を遂げるカナダを、〈総論〉、〈通史編〉、〈テーマ編〉という3部構成に仕立ててあります。全部で50の章にわたって詳細に解説されており、中身の濃い内容となっています。それぞれの章は独立しているので、どこから読んでも構わないそうです。

 

〈総論〉では、世界のなかのカナダという観点から、カナダ史の特徴・魅力、カナダの地勢、多元社会カナダの特質について述べています。

 

〈通史編〉では、先住民の到来から今日までの重要な出来事を、(1)先史時代からフランス植民地時代、(2)イギリス植民地時代、(3)国家の自立への模索、(4)第二次世界大戦後の発展、と四つの時期に分けて、わかりやすく解説しています。

 

〈テーマ編〉では、カナダ社会と移民・先住民、カナダと日本(日加関係)という二つのテーマを扱っています。とくに「カナダと日本」の部では、日本人あるいは日系人に関係の深い出来事がたくさん登場してきます。

初期の日本人移民、ヴァンクーヴァー暴動とルミュー協定、激動する世界に翻弄された日本とカナダ、第二次世界大戦と日系人強制移動、鉄条網なき強制収容所、野球チーム「ヴァンクーヴァー朝日」、そして、戦後の日系人補償問題リドレス、日加経済関係の変遷、さらに、太平洋の架け橋としての今日の日加交流・・・。どれを取っても関心が引き寄せられる話題です。

 

読後、カナダの歴史に興味がわいてきて、もっと知りたいという人には、巻末の「カナダの歴史を知るためのガイドブック」でカナダ研究家によるそれぞれのカナダ関連著書(日本語)が一覧表で紹介されています。

また、11世紀ヴァイキングのニューファンドランド到来から2016年ジャスティン・トルドー首相の駒形丸事件に対する謝罪まで、カナダの歴史を詳細に記述した貴重な年表も付いています。

 

細川氏は、「カナダの魅力は、カナディアン・ロッキー、ナイアガラ滝、メイプル街道、赤毛のアン、アイスワインだけではないのです。歴史を知れば、もっとカナダを深く理解することができますし、地域や民族の多様さを立体的に実感できると思います」と述べています。

 

さあ、本書をひもといて、カナダの歴史の旅へ、あなたも出発してみませんか?

 

■カナダの歴史を知るための50章

 細川道久 編著

 明石書店

 定価 2,000円+税

 

(8月27日、色本信夫)

アート・文芸:【Book 紹介】カナダ事件簿

カナダ事件簿

ウィルソン夏子/著

彩流社/発行

定価/2400円+税

 

 

オンタリオ州ロンドン市在住のウィルソン夏子さんが、このほど(2017年2月)、著書「カナダ事件簿」を出版しました。

 

著者は、名古屋生まれで、東京芸術大学、ウエスタン大学(オンタリオ州)の音楽学部の修士号を得て、室内楽ピアノ奏者。文学系のカナダ人の夫との出会いを機縁に文筆業にも携わっています。

 

ウィルソン夏子さんは、長年にわたり日加タイムス/e-nikka にも投稿してきたことで、読者にはおなじみの存在でもあります。カナダの社会問題や観光情報、外国旅行体験などに関する原稿を寄せていましたが、2005年からはカナダで起きた事件をシリーズで執筆することも始めました。

 

この年3月18日号「ドネリー一家虐殺事件」を皮切りに昨年(2016年)8月に掲載の「ロンドンのテロ未遂事件」まで、10年余の間「カナダ事件簿」が続き、歴史的に話題を呼んだ出来事や、最新の事件などを扱ってきました。著者独特の鋭い観察眼に多くの読者が引きつけられたものです。

 

本書では、日加タイムス/e-nikka に掲載された記事からとりわけ興味深い14の事件を選び紹介。内容は「アーティスト(作家、画家、音楽家)」と「事件」の大きく2部に分けられています。

 

「アーティスト」の部では、「赤毛のアン」作者モンゴメリーの自死(1942年)、グループ・オブ・セブンの画家トム・トムソン─湖に死体(1917年)、グレン・グールドの母親は誰だったのか(1975年)、など。「事件」の部では、開拓時代先住民の部族争いに巻き込まれた神父惨死事件(1649年)、村人たちの敵意─ドネリー一家虐殺事件(1880年)、にせ予言者「十二使徒教団」の盛衰(1925−1930年)、カナダ最初の誘拐事件─ラバッツビール社長の災難(1934年)、ボクサー・ハリケーン・カーターえん罪と闘う人生(1966年)、ケベック解放戦線FLQによる事件「十月危機」(1970年)、カナダで最初に成功した航空機ハイジャック(1971年)、わが町で起こり得たテロ爆破計画を未然に防いだ連邦警察(2016年)など。本書で取り上げている事件の多くはオンタリオ州で起こったものです。

このうち、モンゴメリーやグレン・グールド、テロ未遂事件などいくつかのテーマについては、著者自身がこれらに関する現場を実際に訪れて取材。そして「事件を起こした人たちは、人生の途中で何があったのか、なぜこうした罪を犯すことになったのだろうか」と、思いを馳せています。

 

それぞれの章の末尾に、著者が自作の短歌を添え、事件当事者の心境やその時代の状況を詠んでいるのも興味をそそられます。ウィルソン夏子さんは「短歌によって、記事内容とその時の自分をつないでおきたい、という気持ちがあったからです」と述べています。

また、各章に英語版ダイジェストが付いているので、日本語が分からない人でも事件の概要が把握できるようになっています。(3月19日 色本信夫)

 

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