カナダつれづれ

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アート•文芸:新刊紹介 山岸邦夫著「The Return of a Shadow」(英文長編小説)

強制収容所を生き抜いた長田栄造の姿から日本人移民への影響に光を当てる

 

 

かつて在トロント日本国総領事館に勤務していた山岸邦夫さん(B C州バンクーバーアイランド在住)が、英文の長編小説「The Return of a Shadow」を著わし、このほど出版されました。出版社は英国の Austin Macauley Publishers です。

 

 

この小説は、カナダの日系人強制収容所とそれが一人の日本人移民に与えた影響を今日的視点から描いたものです。

主人公の長田栄造(おさだ・えいぞう)は、太平洋戦争の前、経済的理由から妻と3人の年若い息子を日本に残して単身カナダに渡りますが、戦争ぼっ発と共に日系人強制収容所に収容されます。その後、43年間をカナダで過ごし、70歳になった時、家族と再会すべく日本に帰国することを決めます。カナダに渡って以来、家族に送金を続けてきた栄造ですが、妻との音信は23年前に途絶えています。その理由を知ることもないまま、彼は日本を訪れ、家族と会いますが、失意のもとに再びカナダに戻ってきます。

 

本書のタイトルにある「影」とは誰のこと? なぜ影なのか? この小説は強制収容所を生き抜いた長田栄造の姿に、そして強制収容が彼に及ぼした影響について、著者の新たな視点から光を当てます。

 

本書は、第一部:カナダ、第二部:日本、第三部:強制収容所、となっており、全部で25章の構成です。380ページ。

 

プロローグでは、著者が物語の主人公、長田栄造を知るにいたった経緯と、栄造が埋葬されたバンクーバー島カンバーランドの日系人墓地に彼の墓を詣でた模様が手短に語られます。

 

第一部では、主人公のカナダにおける悪夢のような孤独な生活が描かれます。日本の真珠湾攻撃後、カナダの日系人は強制収容所に収容され、急ごしらえの掘っ建て小屋での生活は悲惨を極めました。著者は、史実を追いかけ、数人の強制収容所生存者とのインタビューを経て、強制収容が一日本人に与えた影響を、そして人間の業を鋭く突いています。

 

第二部では、日本に帰り、家族との再会を果たした栄造が描かれます。日本で彼を待っていたのは何だったのでしょうか。彼の不在の間に家族に何が起こったのでしょうか。果たして彼を迎えた日本は想像していた通りだったのでしょうか。

 

第三部では、栄造は家族の理解を求めて、今は50歳に近い年齢の息子達にカナダでの強制収容所のことをこと細かに語って聞かせます。家族は彼に理解を示し彼を受け入れたのでしょうか。受け入れなかったとしたら、何故でしょうか。栄造は傷心の中に再びカナダに戻ります。そして81歳の生涯を閉じます。

友人とその息子が遺灰をカンバーランドの日系人墓地に納め、碑を建立して帰途についたその時、カナダ連邦政府が戦時下の日系人強制収容を非と認めて公式謝罪をしたというニュースが車のラジオから流れます。

 

エピローグでは、カナダ連邦政府が行った日系人に対する公式謝罪と補償、人種差別をなくすための基金設立の内容が紹介されます。

 

著者の山岸さんは「この小説の中で長田栄造は実在した人物として描かれていますが、あくまでも虚構上の人物です。多くの日系人一世のイメージを凝縮し、象徴した人物像が長田栄造と言えるでしょう。ただし、栄造が本書の中で語るカナダ連邦政府の対日系人政策および強制収容所の生活内容はすべて史実に基づいたものです」と話しています。

 

【山岸邦夫略歴】

福島県福島市生まれ。法政大学で経済学を修めた後、カナダに移住し、在トロント日本国総領事館でリサーチの仕事に従事。カナダの証券会社に転職後、Bay Street、東京の金融街、そしてニューヨークのウォール街で証券業務に携わる。今は退職してB C州バンクーバー島に住む。

 

The Return of a Shadow

by Kunio Yamagishi

Austin Macauley Publishers

 

【本書の購入方法】

下記のいずれかで購入できます 

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2018年3月5日 まとめ:色本信夫)

 

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